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それは、梅雨があけた頃だった。
朝練が終わって、教室の自席について窓の外を見ていた時
「聞いたか、山崎!今日転校生が来るらしいぜ!?」
教室に息を切らしながら入ってきたクラスメイトの田中は目を輝かせていた。
「へぇ?…女子か?」
「すげぇ!よくわかったな!!」
「いや…お前がそんな嬉しそうな顔してるから…男ではないだろう?」
その言葉に余計ににやにやとした田中は俺の肩に手を回して、耳打ちするように言った。
「それがさ、すっげぇ俺好みなの!」
「お前、転校生の顔見たのか?」
「俺、今日日直だったから!日誌取りに行った時にちらっと見えたんだけど、かわいかったー」
「よかったな」
そう言って笑えば
「なんだよ、他人事だな!?」
と田中はむくれた顔をした。
「そんなこと言っていいのか?ライバルは少ない方がいいだろ?」
そう言いながらにやりと笑っていれば、「あっ‼そっか‼」と言って喜んでいた。
その瞬間、本鈴が鳴り、田中はあわてて席に戻っていった。
俺はその姿を見送って、頬杖をついたまま窓の外に視線を移した。
「(1年の7月に転校か…こんな時期に転校してくるってことはわけありか…?)」
窓の外では、いつの間にかセミが鳴き始めていた。
今年も夏が始まる。
Endless Moment
2014.09.14
宗介、お誕生日おめでとう