BBB
□Envy
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※原作3巻―パンドラム・アサイラム ラプソディー―(アニメだと5話あたり)をベースにしています。
※ブローディー視点。
この世の中は理不尽だ。
俺、デルドロ・ブローディーは外見がイマイチと言われ、生きたまま潰され、液状にされ、この見てくれのいい人間の中に血液として移された。
そうすれば内外ともに完璧になり、より愛される存在になるんだと。
誰が願ったっていうんだ。
アリギュラ、あのいかれた化け物女以外、そんな酔狂なこと願ったやつはいない。
思い出されるのはさっきのあいつら、ライブラっていう変わり者集団の会話だ。
「やっぱりいいわねー!かわいいわードグ・ハマー」
「マジっすか、姐さん」
「外見だけはアツいですよね」
「犬!テメェまで!?」
背の高いブロンド女と黒髪の巨乳女が俺の器の人間、ドグ・ハマーを褒める中、銀髪の男が信じられないとでも言うように叫んでいた。
そいつらを一瞥した後、その集団の端にいる女に目が行く。
どうしてもこの女に目が行くのが不思議で仕方ない。
俺がこいつらに合うようになったのはドグ・ハマーと一体化してからだったが、この女は会うたびにいつも笑っていた。
へらへら笑って気楽なやつだ。
ただ、その笑い顔が嫌にならないのは、アリギュラのように邪心がないからなんだろうな。
目が行くようになったのはいつからだったか。
「……おい……ドグ。」
アリギュラを倒すために術を発動し、今は俺が器になっている状況だ。
俺は、俺に纏われて中で守られている奴、ドグ・ハマーに声をかけた。
『何?デルドロ。』
「お前、さっきさ、何であのバケモノに突っ込んでいったんだ?直前までお前アリギュラの事ガチで忘れてたじゃねえか。驚いたぜ、突然で。」
『えー?』
ドグは天然だ。
たまに何を考えているかわからないことがある。
だからこうして聞いてみないと、奴の血液である俺も理解できないことが多い。
『だって、あの時君が昂ぶったじゃん。』
「は?」
『君が望むなら僕はいく。当たり前。一心同体だから。』
奴は、ドグは、確かに俺の中で笑っていた。
一心同体か…
「…おい、離れてろ小僧。インパクトの瞬間何が起こるかわかんねぇぞ。」
俺は、俺たちの背後にいる銀髪小僧に声をかけた。
「せーな!集中しろよ。アレの中心をブチ抜く事だけ考えな。」
不満そうに俺たちを見ながら言う男の目には、くだらない、いろんな感情が混ざって詰まっているように見えた。
こんな器の小さい男の何がいいのかね…
軽い怒りにも似た感情が湧いて、じろりと見つめれば、銀髪の小僧は身じろぎをした。
「…な、何だよ…」
「………そのまま衝撃波に巻き込まれて死ね。」
俺は思い出す。
あの女のことを。
いつも花のように笑っているあの能天気な女のことを。
『彼女の笑顔は素敵だよね。花みたいにきれいだ。』
「…考え事もオチオチできねぇな。」
『一心同体だからね。ずっと見ていたくなる気持ちはわかるよ。』
俺もわかるぜ?
あの女を、マリアを見ると、アリギュラの時とは違う昂ぶりがあることを。
あれは、ドグの気持ちの昂ぶりなんだろ?
お前はいいのかよ、あんな銀猿に任せておいて。
俺のせいで獄中にいるわけだから、俺が言えた義理じゃねぇけどな。
『マリアが一番嬉しそうに笑うのは、彼と一緒にいるときなんだろうね』
チッ…
まったくもって、理不尽な世の中だ。
Envy and Jealousy
「同じ色黒なら俺はお前の方がかっこいいと思うぜ、ドグ?」
『ありがとう、心友。』
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envy = 羨望
2015/06/22