BBB

□Jealousy
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※原作3巻―パンドラム・アサイラム ラプソディー―(アニメだと5話あたり)をベースにしています。
※ザップ視点。






正直に言おう。

俺はこの男、ドグ・ハマーが苦手だ。

甘いマスクに長身で屈強な体。

俺とは違う色を持った男に女どもは黄色い声を上げる。


「やっぱりいいわねー!かわいいわードグ・ハマー!」

「マジっすか、姐さん。」

「外見だけはアツいですよね」

「犬?!テメェまで!?」


あの犬女までそんなことを言うもんだから、俺の心は動揺しまくっている。

うちの屈強な女どもが惜しげもなく賛辞を捧げるそのイケメンは、その中身に懲役1000年の罪を重ねたデルドロ・ブローディーを血液として抱えている。

もっとも、今はブローディーを外側に纏っている状態であり、赤黒い巨人の姿をしている。

凶悪な奴が善良な精神と美しい肉体を持つ人間と融合したのだ。

だからこそ、こいつは檻の中に大人しくいるわけだが、外に出てくればこうして女どもの目を引く。

それが気に入らない。

気に入らないのはそれだけじゃねぇけどな…

犬女の横にいるマリアを見れば、いつもと変わらない笑顔でブローディー&ハマーを見ていた。

こいつもハマーみたいなやつがいいのか?

あーくそ、イライラするっつーか、落ち着かねぇ!


「? どうした、ザップ?」

「…旦那よぉ…俺の持ち場なんだが…正直不満だね」

「何故だ!?判断力、スピード、精密さ!どれをとっても君以外には不可能だ!」

「何故って言われてもなぁ…」


なんでよりによってあの野郎と一緒の配置なんだよ。

こんなじれったい気持ちでやつの近くにいるかと思うと、すっきりしねぇ。


「あ…ザップ!ザップはハマーと一緒の場所ですよね?」

「マリア…いや、俺は…」

「ザップ以外にこの作戦を実行できる人はいませんもの。頼りにしてます!」


じっと見つめられたかと思ったら、にっこりとほほ笑まれた。

期待と信頼に満ち溢れた笑顔。

くっそ‼かわいいんだよ!!


「っ…お、おう!任せとけ‼」


俺がこの笑顔に弱いことを知ってるのか?

いや、この裏表のない女にそんな芸当できるわけねぇ。

だからこそ、この無計画な笑顔が他の男に向けられるのが怖いんだ。

それにはまってしまうやつが出てくるから。

そう、このハマーだって例外ではないはずだ。

二人が話している姿を見ると、頭の中で激しい警鐘が鳴る。

ハマーはマリアに惚れている。

男の直感だ。

あー…今日の任務、頭が痛ぇ…



―…


レオを救出し、無事に任務が終わった。

まぁ、ハマーは結構な怪我を負ったが、本人はいつものように笑って、さっさと牢獄へと戻って行った。

一緒にいた時に感じた殺気の正体をはっきりさせることができないままだったが、俺は内心ほっとしていた。

もっとも、あの殺気を出しているのはハマーではなくブローディーの方だっただろうが…

俺が敵対視されているってことは、やっぱり奴もマリアのことを…

おいおいどうするんだよ…あいつら、まさかいい感じなのか?

ハマーは旦那のお気に入りでもあるし、女どもからの評判もいい。

マリアはマリアで、ハマーともブロディ―とも屈託なく接してたし…

二人が話している雰囲気はのんびりしていて波長が合ってるようだった。

あれ?あいつらお似合いなんじゃね?


「そういえば、マリアってばご機嫌ね?ハマーと何を話していたの?」


姐さんが尋ねると、マリアは嬉しそうに口を開いた。


「今度の美術鑑賞の日に一緒に行こうと誘っていただいたんです!珍しくブロディ―が私を誘ってくれてるらしくて、なんだかうれしくって!」


本当に嬉しそうに話すマリアにまたもや頭を殴打された時のような痛みが襲う。


「どうしたの猿。顔色がいつも以上に悪いわよ?」

「うるせぇ犬女…‼」

「…ふーん?…マリアー?」

「なんですか、チェイン?」

「ハマーの外見ってどう思う?」

「ハマーですか?素敵だと思いますよ。」


おいいいいいいい!!何聞いてくれてんだくそ犬女ぁあああ!!!

聞きたくなかった言葉を聞いて変な汗が噴き出してきた。


「そうよね〜あの甘いマスクがたまんないわよね〜女ならみんなときめいちゃうわよね〜!」

「えぇ。どっかのくそ猿とは雲泥の差だわ。」


あぁぁ、腹立つ〜!

言いたい放題言い放ってどんどん進んでいく女二人の背中を恨めしそうに睨んでいると、何かに服を引っ張られる感覚。

驚いて見ると、マリアが俺の服をそっと掴んで、じっと顔を見上げていた。


「ザップ?大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」

「…大丈夫だよ。ほら、行くぞ。」


顔をじっと見られることに耐えられなくて、視線を外して前に進もうとすれば、ぐいっと腕を捕まれた。


「もしかして、さっきのチェインたちの言葉、気にしてるんですか?」

「べっ…別に気にしてねぇし‼お前もハマーが好きなら…」

「え?何を言ってるんですか?」


きょとんとした顔に毒気が抜かれる。


「ハマーはよい同僚であり、お友達です。」

「…でも、さっきツラがいいって…」

「確かに素敵な方ですけど、外見だけで好きになるわけではありませんよ。それに…」


マリアは少し照れたように笑った。


「私はザップの方が、かっこいいと思ってますよ?」


…こんなうれしいことをかわいい顔で言われて我慢できる男がいたら、そいつは男じゃねぇ。

捕まれていた腕をするりとほどいて、マリアの薄い肩を掴んだ。


「? ザップ?」

「マリア…」


顔を近づけようとすると、頭の上に突然とんでもない重みを感じて、俺の顔は地面に押し付けられた。


「何してんの、くそ猿?マリア、変なことされなかった?」

「チェイン!?びっくりしました…!」

「うんうん、怖かったね!さっ、早く行こう?」

「? はい!」

「い、犬女〜てめぇ覚えておけよ…‼」





Envy and Jealousy





「チェイン、いつからいたんですか?急に気配を感じてびっくりしました!」

「マリアが付いて来てないから戻ってきたのよ、今。(本当は最初の方からいたんだけどね)」




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jealousy=嫉妬

2015/06/22


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