BLEACH 短編

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〜FALL〜





真っ赤な紅葉



黄色の銀杏




緑は黄色に変わり



強い陽射しは弱くなり





空はどんどん澄んでいって




吹く風が肌寒く感じられる





そんな秋。




秋と言えば、いろんな物事に向いている季節とされている。



芸術の秋。


食欲の秋。




そして秋は『恋』の季節でもあるらしい……





「……で?」


「はぁ?」


「『はぁ?』じゃないわよ。これは何って聞いてるの?」


「…見てわかんねーのかよ?誰がどう見ても『鯛焼き』だろ?」




いや、ごめん。


いくらなんでも、これが何なのかぐらい、わかるわよ。


確かに誰がどう見ても『鯛焼き』よ。



これがパンダ焼きに見える人がいたら、その人はきっと鯛とパンダを見たこと無い人よ・きっと、うん。



しかし、私はその両方を見たことあるし、鯛焼きもパンダ焼きもどっちも食べたことあるし。




目の前にある、ほかほかと温かい美味しそうなコレが『鯛焼き』ってことはすぐわかった。



ただ、私が聞いているのは…



「何で鯛焼きが私の前にあるのかって聞いてるの。」



恋次はちょっとぽかーんとした感じで私を見つめていたけど、すぐに口を開いた。



「鯛焼きが歩いてくるわけねぇだろ。俺が買ってきたんだよ。」



……そりゃね。




鯛焼きが脚を生やして歩いて来たら、その時点でそれは鯛焼きじゃないし、そんな鯛焼き見たくないし、食べたくないし、


何より想像したくない(汗)



人間のような脚を生やした鯛焼きを想像して、思わず脱力してしまった。



「…いや・だからね、何で私の目の前に置いてくれたの?」



がっくりとした感じの私を見て、恋次は難無く言い放った。



「食えよ」








………。



「……?どうしたんだよ、冷めないうちに食えよ。」



わからないといった顔をした恋次が、卓上中央に置かれていた鯛焼きの入った紙袋をずいっと私の方に押した。




「……恋次?」


「あ?」


「私に喧嘩売ってんの?」




顔は恐ろしい程に笑ってる。




顔だけ、は。





周りの空気がぴりっと張りつめた。



恋次が一瞬びくりと肩を震わせた。



一見爽やかな笑顔は、はっきり言って黒かった、いや、黒すぎた。



「昨日・私が言ったこと忘れちゃったのかな?(笑)」




恋次の口元がひくひくと引きつっている。




笑顔とは反して、どろどろとした黒いオーラに取り囲まれたかのように、体が硬直している。



……いや、まぁ・実際、ドス黒いオーラに包まれてるんだけどね、恋次が。



オーラを発してる私が言える台詞じゃないかもしれないけど、




これは恋次が悪い。




「昨日、私・言ったよね?『私、ダイエットしてるの』って。」



そう。




私は只今・ダイエット中。


原因はちょっと最近太ってきた気がするから。



でも、だからっていって、甘い物に目が無い彼氏…つまり恋次にまで「甘い物食べるな」とか言うような酷い彼女じゃないんだよ、私。




けれどね!




「昨日の今日で、何で私に鯛焼き(しかも大量)を持ってくるかな?!」



半、苛立った私に恋次は少し呆れたかのように、袋の中から鯛焼きを1つ取り出した。



「……何でダイエットなんて始めたんだよ?」




ぱくり、と鯛焼きを頭からかぶりつく恋次。



固まる私。




固まったのは恋次の発言によるものだったけど、


眉間に皺が寄ったのは目の前で鯛焼きを食べられたことによる。



……すいません、この人・殴っていいですか?(震)



「……の…か」


「あ?」


「恋次の馬鹿ー!!!(怒)」


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