BLEACH 短編
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「っ…はぁっ…!///」
触れるだけの口付けを何度も角度を変えながら繰り返されると、
私の我慢の限界が訪れて、
突然の出来事でうまく呼吸ができないのと、往来での行為での恥ずかしさに
彼の胸をトンと押して離れた。
解放された唇から体全体に広がる熱が、
心地好さを通り越して、熱かった。
「…寒くなくなっただろ?」
不適な笑みを浮かべた大きな翠の瞳が私を見つめると、私の心臓が更に跳ねた。
「っ…!///」
更にかあっと顔に熱が集中したから、その顔を見られないようにぷいっと反らしてみた。
冬獅郎はズルイ。
夏も、冬も
大して暑くも寒くもないくせに。
暑がる私を涼ませることも
寒がる私を暖める方法も知ってる。
貴方にできないことなんかあるんだろうかって、
何だか凄い錯覚をしてしまう。
若くして隊長まで登りつめた才能も、
その翠の瞳に秘めた限りない可能性も、
私を惹き付ける彼の存在から
目を離せない。
君への熱は増ばかり。
きゅっと左手を胸元で握り閉めた。
悔しい。
切ない程に
君に夢中だなんて…
そう思った瞬間、冷たい北風とは違う暖かいものが私の右手を包み込んだ。
冷たい指先が感じたそれが、彼の左掌と気付くのに時間はかからなかった。
大きいとは言えない彼の掌に包まれた私の掌が、じわりと暖かさを写しとる。
「え、ちょっ…と、冬獅郎??」
「いいからさっさと歩け。あと、次「寒い」って言ったら、もっと顔真っ赤にさせるからな。」
「んなっ?!」
「さっき、お前言っただろ?『冬獅郎がこの寒さをどうにかしてくれるんだったら黙る。』ってな。」
ふっと笑いながら、「寒くなくなっただろ?」と再び問われ、無意識に包み込まれた右手に力が篭った。
「っ…」
自分の頬の熱りが増した。
彼に手を引っ張られる形だから、私に冬獅郎の表情は見えないし、前だけを見る冬獅郎に私の今の表情は見えない。
だけど
私が見た冬獅郎の左頬と耳は真っ赤で
寒くなくなったのは私だけではないのだと思うと、自然と笑みが込み上げてきた。
「……ねぇ、冬獅郎。」
「…何だ?」
「私…冬・好きになったかも。」
驚いた顔をした冬獅郎が振り向いて足を止めた。
「ほんの少しだけね」とすぐに付け加えたら、驚いていた顔がすぐに綻んで「だろうな」と言葉を紡いだ。
再び歩み始めた足。
放されることのない繋いだ手。
ふと、赤く染まった頬に冷たさを感じ、見上げた空。
灰色の空から純白の結晶が、はらはらと降り注いでいた。
「あ…雪だ…!」
「あぁ…」
私がそう言っても歩みは止まらない。
二人とも、灰色の空を瞳に映しながら歩いていく。
「綺麗だね…!」
「あぁ…つーか…」
「「寒い」」
今度は、ぴたりと冬獅郎の歩みが止まった。
大きい翠の瞳が私を捕える。
その吸い込まれそう瞳を見つめた直後、
私は自分の唇と冬獅郎の唇をそっと合わせた。
ゆっくりと唇を離した後、
ぱっと顔を離して、私は彼に微笑んだ。
「っ…?!///」
「…よし!帰ろう♪」
握られていただけの右手を、彼の左手の指に絡めて、
しっかりと手を繋いで
私は彼を引っ張るかのように、前へ前へと駆け出した。
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