BLEACH 短編
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今日は例年に比べれば
比べ物にならないくらい
暖かな一日だった
everlasting love for you
「『クリスマス』?」
「そう。尺魂界にはないの?」
「ねぇな。だってそれは異国の文化だろう?」
昔の日本に無い文化は、尺魂界では馴染みはない。
でも
「……祝う習慣はねぇけど、どんなのくらいかは知ってるぜ。」
紅白の服着た爺さんが、子供が欲しい物をやるんだろ?
そう言って蓮の顔を見たら、きょとんとしてて…
「…蓮?」
「あ、ごめん。まさかそっちを言われると思ってなくって(笑)」
……一瞬間違えてるのかと思った。
どうやら蓮によると、クリスマスってのは宗教に関連した日らしい。
元々、異国の宗教の始祖……『神様』が産まれた日がクリスマスなんだと。
だからそれを祝うらしい。
今の日本では、その宗教を信仰しているとか関係なく、行事の一貫として文化に馴染んでるんだと。
「でも恋次が言ったのも正解。クリスマスは元々神様の生誕を祝う日だけど、クリスマス前日の夜にはサンタクロースっていうお爺さんが子供たちにプレゼントをあげるの。」
だから人に贈り物をする習慣があるんだと思うよ、私は。
そう蓮は言って空を仰いだ、
それに伴い、綺麗な蓮の髪がさらりとなびいた。
「今日はすごい星が綺麗だね。」
「ん?あぁ…すげーな」
言われて見上げた空は済んでいて、雲一つ無い。
「…雪がねー」
「あ?」
「雪が降ると『ホワイトクリスマス』になるんだけど。」
「…降ってほしいのか?」
「んー…降ってほしいっていうか…降ったら綺麗かなって。でも今年は去年より暖かいから…降っても雨になっちゃうだろうなー…」
暖かい・とは言っても、今日は年の背も近付いた師走。
流石に夜になれば冷え込む。
はぁっと、可愛らしい口から吐かれた息が白くなって消えていく。
街で、すれちがう周りの奴らは、幸せそうな顔をしていた。
当然、皆が皆、幸せなんて有り得ないことだろう。
聖夜と呼ばれる今日が、全ての者にとって幸せな日とは限らない。
現に、俺がそうだ。
いや、実際には今日は幸せだ。
だって蓮がそばにいるから。
でも、俺は思い出すんだ。
遠い昔、
愛情も同情も無い世界で、命がけで生きていた幼い頃を。
……誰かを愛するとか、愛されるとかまだ知らなくて、
雨風をしのげる程度の小屋で、寒さに耐えていたあの頃を。
降る雪を、雪を降らす灰色の空を睨むように…でも切ない気持ちで、見上げていたあの頃を。
蓮には体験したことの無いことだろう。
空腹に堪え、寒さに堪え、
無力な自分を恨みたくなる気持ちとか。
「はい、恋次。」
「ん?」
「プレゼント」
「は?」
「『は?』じゃないよ。クリスマスプレゼント。私から恋次への。」
渡された小さな箱を手に乗せられた。
可愛らしいラッピングの施された小さな箱。
嬉しい
けど…
「お、おい、でも俺何にも用意してねぇし…!」
焦って蓮に言うと、
「いいの」
と蓮は笑った。
「…私ね」
「ん?」
「…幸せなんだ」
はにかんだように笑った蓮。
俺はそんな蓮を見つめる。
「今まで好きな人とクリスマスを過ごしたことなかったから」
だから、恋次と一緒にいられてすごい幸せ。
笑っているのに切ない表情。
「恋次は私をたくさん幸せにしてくれたから、だからそれはそのお礼。」
「っ…お前…」
無意識に、蓮を抱き締めた。
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