BLEACH 短編

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幸せか?



そう聞かれて、答える言葉は決まりきっている。




俺だって幸せなんだ。



俺は蓮にたくさんの幸せもらってるだろ?



たくさん愛してもらったし、



誰かを愛することがこんなにも幸せなことだって教えてもらった。



そばにいてくれるだけで癒されて、満たされて




あぁ、これが幸せなんだって



そう思えるんだ。




だから…



「蓮…」


「ん?」


「お前勘違いすんじゃねぇーよ」


「え?」

「何一人だけ幸せみたいなこと言ってんだよ。俺はな…蓮のことが好きなんだぜ?」



蓮のことが好き過ぎて苦しいんだ。



立場とか、住む世界とか



人間とか死神とか




そんなもの関係ねぇ



「お前だけじゃねぇ…」



好き、なんだ。



「…俺だって幸せなんだ。」



愛してしまったんだ。




離れたくない



離したくない




……でも、例え離れても



心は、



想いは、




変わらない。



変えられない。



俺の想い、全部蓮にくれてやる。



抱いた蓮の細い肩が、微かに震えている。



黙り込んでしまった蓮の頭をそっと撫でると、答えるように背中に回された手が俺を掴んだ。



「蓮…」

「…っ」

「馬鹿…何で泣いてんだ?」

「…泣いてないよ」



そう答えた蓮は涙声で、



俺は益々、抱き締める腕に力を込めた。



「……私で」


「ん?」


「私で、いいの?」




私といることが恋次にとって本当の幸せになのかな?




蓮は俺の胸に顔を埋めたまま、そう言った。


「それは、蓮だって同じだろ?」


「っ…でも…!」



一呼吸おいて、蓮がうつ向いたまま言う。


「…私は恋次といれて幸せだけど……恋次にはもっともっと幸せになる権利があるんだよ。」



今まで頑張ってきて、これからもっと頑張って



それを支えて、恋次を幸せにする人として、私でいいの?



蓮がやっと顔を挙げた。



頬に涙の跡。




そっと指で拭ったら、


再び溢れた涙が、同じ跡を残して滑り落ちてきた。




「……昔はさ」


「え?」


「誰も信じられなかった。」


目標はあった。


目指す物があり、超えたいと思う人がいた。



護りたかったモノがあった。



でも、護れなかったんだ。



今なら、護れるかもしれない。



………違う、護りたいんだ。



「だって、蓮は俺を信じてくれた。」



惜しみなく愛してくれた。


見返りとか関係なく



ただ、純粋に愛してくれた。



俺を信じてくれた。



汚れなき澄んだ瞳で、血のような俺の紅を「綺麗」だと言った。



誰もが怖がり、品が無い、無骨だと言う俺を、



野良犬みたいな俺を



愛してくれた。



初めて、心から惹かれた。



独占欲に駆られた。





……心から信じられた。




すごい幸せなんだって、初めて気が付いた。



「…俺は、蓮だけ愛してる。」


「…ん」


「お前だけしか要らない…」


「…うん」



「俺が、お前を幸せにしてやりたい…」


「…」


「…俺も、蓮に幸せにしてもらいてぇ…」



「…うん」


涙を流す蓮の顔を上げさせる。



そっと唇を寄せて、涙の跡を吸い取るように



瞼に



頬に



唇に



静かに口付けを落としていく。





「愛してる…」



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