BLEACH 短編

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朝夕が涼しくなった今日この頃。


秋の訪れを感じると共に、夏の終わりがもうすぐそばに感じられる。


そんな私の前には一袋の線香花火。



夏の最期を締め括るにはふさわしいように感じられる「それ」が、


私にはすごく躊躇われるものだった。





線香花火





「線香花火やないか」


突然、後ろ…と言うより耳元で発せられたその台詞は独特の訛りのあるもので、


誰か・だなんて、振り向かずとも一瞬で理解できた。


「…残ってたんだけど、やる?」


「そうやなー。夏の風物詩もそろそろ見納めやし…よし、やろか?」


彼に微笑み返した表情とは裏腹に、私の心の中は



憂いで満ちていた。





「…綺麗やな。」


「……うん。」



庭に一本立てたロウソクを、挟むようにしてしゃがんだ私達。



パチパチと控え目に弾ける花火に視線を向ける貴方。


そんな貴方を見つめる私。


絡まない視線。



近い距離なのに、


どこか遠い世界にいるような私。




微かな炎に照らし出された貴方の顔はいつもと同じようで


いつもと違う表情の私に気が付かないフリをしているようで



切なくて



苦しくて




私の抱いた恋心という物が



まるで線香花火のように



儚く消えてしまうような気がした。






「最後の一本やな。」



袋の中身は空になり、


残るは私とギンの持つ、二本の線香花火のみ。



これが終わったら…。


口には出さないが、不安が胸一杯に広がり、


思わず火をつけることを躊躇った。



ジジッと音がして次第に火が付くと、


先程まで交していた他愛のない会話が途切れ、二人の間に沈黙が訪れた。



線香花火の先が丸まり、パチッと小さな火花を散らす。



不安定なその火の玉を落とさないようにと指先に神経を集中させた。




「…もう、夏も終わりやな。」


「…そうだね。」




「…なぁ」


「…ん?」






「いつか、また……二人で花火しよか。」






突然絡んだ視線



重なった想い




ぽとり、と


火の玉が地面に落ちると同時に、



それより大きい水玉が





頬の上を滑り落ちた。





『また』



『いつか』




そんな日が来るのかと、



信じてよいのかと、





貴方を愛していて




待っていてよいのかと





そう思いながら、ただ涙した。




貴方はまた笑った。



「僕は泣かせてばっかやな」





次に逢う時は、


蓮を泣かせるんやのうて、笑わしてやれるような男にならんとな…




抱き締められた耳元で聞こえたのは、



強い意思か、謝罪か。





微かに震えた声に




抱き締める腕の力が強まる。





ねぇ、




また、二人で





いつか、きっと





線香花火をしよう……。








夏の終わり



秋風の訪れと共に薄れていく夏。





月だけが見ていた



殺那の恋。





儚くとも、強く繋がった



永遠の想い。






まるでそれは




微かな炎で彩る




線香花火のように…。





************


初悲恋…?(汗)


破面側に行ってしまう直前の話…?


あれ?そうだとしたら微妙に季節がズレてる…(殴)



2008.02.18 加執・修正





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