〜なくせに

□欲しい
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欲しいくせに




俺にとって上総は大切な存在だ。

それはいろんな感情が複合されている。


始めは友達のつもりだった。

けれど、あいつがそれを拒んだんだ。

あいつにとって俺はライバルであり、弱さを見せたくない存在だったと思う。

つまり、友達ではない。


そして俺はあいつを友達として見れなくなった。

あいつの独特な空気が俺の心をかき混ぜるんだ。


上総を守りたい…


しかし、俺は所詮自分勝手な奴だったらしい。


俺はあいつを守るつもりでいたが、結局は自分の欲しいモノを手に入れようと必死になっていただけだったんだ。


「俺は上総が好きなんじゃない。」


欲しいくせに、欲しくなさそうな風を装うのは、もうやめる。


「俺は、あいつが大切なんだ。自分の命よりも、誰よりも。」


愛していると言う言葉はまだ言えない。


いや、言うのは上総本人にだけだ。


それまでは、この言葉を言えない。



―…



学院の後輩に告白された翌日。


廊下を歩く俺の前には上総の姿が。


「よう。今日が試験最終日だな。調子はどうだ?」

「…別に。順調よ。」


返された言葉はいつも通りの冷たい言葉。

しかし、いつもとは明らかに違う。

感じる、いつにない殺気にも似た冷たい視線。


「…あんたになんか、絶対負けないから。」

「おい、上総…?」

「あんたが負けたら、私に二度と話しかけないで。」

「おい、どうし…」

「二度と私に近づかないで!」


冷たい視線とピリッとした空気に、触れようとした手が固まった。


しかし、


冷たい言葉とは裏腹に、上総の瞳は僅かに潤んでいて、熱を持っているようだった。


俺は去っていく上総の後ろ姿をただ見つめながら、呟いた。




「欲しいと願うことは罪なのか…?」




何を投げ出してもいい。



俺はお前の笑顔が欲しいんだ…






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