BASARA

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「やれ、神楽。探したぞ。」

「刑部?どうしたの?」

「…相変わらず忙しそうよのう。」

「まぁね。やらないといけないこと山積みなの。」

「そうか。忙しいところ悪いが、ぬしの力が必要でな…ちと耳を貸せ。」

「え…?」




☆★☆



「三成様!?どちらに…」

「鍛錬に行ってくる」

「お、お食事の準備ができておりますが…」

「そのような物、私には必要ない」

「ですが…刑部さまに必ずお召し上がりいただくようにと…」

「必要ないと言っているだろう!!」

「もっ、申し訳ございません!!」

「…フンッ…!」


三成が家臣から眼を逸らした瞬間、


「こら!三成!!」


聞きなれた声と同時に頭上に衝撃が走る。


「っ!?なっ、何だ?!」


あまりの衝撃に頭を押さえながら振り向けば、そこには神楽の姿があった。


「神楽?!何をする?!というか、なぜここにいる?!」

「用があって来たのよ。それより三成、あんたここ一週間、まともにご飯食べてないって本当?」

「フン…貴様には関係のないことだ…!」

「…へぇ?そういうこと言っちゃうんだ?」


神楽の声が低くなり、顔は言葉と裏腹に黒い笑みを浮かべている。

三成は一瞬、僅かではあるが、肩をビクリと震わせた。


神楽が怒っている…!!


三成と神楽は幼い頃から共に生活してきた。

神楽は何かと問題が絶えなかった三成を支え続けてきた。

そんな生活が長く続いたためか、神楽には滅法頭が上がらない。

特に本気で怒った神楽には逆らえないと、三成の体が十分理解している。


「三成…」

「なっ、何だ?!」

「ご飯だけはしっかり食べなさいって言ったのに…」

「めっ、飯など私には必要ない!!」

「…へぇ?そんなんだからそんな細いのよ」

「何…?貴様私を愚弄するか?!」

「ご飯食べないからそんな痩せてて、だから家康にも勝てないのよ」


家康…宿敵の名前を挙げられて冷静でいれるほどの理性など、三成は持ち合わせていなかった。


「貴様が家康の名前を口にするな!!」

「この間、家康が言ってたわよ。『三成は細いよな!飯が口に合わんのではないか?!』って」

「何?!我が軍の飯を愚弄する気か?!許さんぞ、イエェヤァ…むぐっ!!!!」


もはや口癖と化している宿敵の名前を叫ぶために開いた口が突然塞がれる。

口の中に押し詰められたのは、どうやら握り飯のようだ。


「ふさま、はにほふる!?(貴様、何をする?!)」

「はいはい、口に物を入れてる時は喋らない。」

「……(もぐもぐ)」


これも教育の賜物だろう。

神楽は食事と礼節に関しては厳しかったため、三成にもそれが十分定着しているようで、神楽の一言で三成は黙り咀嚼に専念し始めた。

ふうっと、神楽が静かに息を吐き、安堵の笑みを浮かべた。

それに三成の心臓が跳ねる。


「…おいしい?」

「…フン…」


プイッと目線を逸らした三成だったが、それが否定ではなく肯定を示していることは神楽には分かっていた。


「三成、座って」


神楽は縁側に腰掛けると、自分の隣をポンポンと叩いた。

三成はそれを見つめたまま、立ち尽くしている。


「…私もご飯まだ食べてないんだ。お弁当作ってきたから一緒に食べよう。」

「…神楽が作ったのか…?」

「そうよ。文句ある?」

「…フンっ」


ドカリと座る三成に、神楽は微笑みながら握り飯を差し出す。

それを受け取ると三成は無言で受け取り、口へと運んだ。


「…久々だね、二人でご飯食べるの」

「……」


昔は神楽が食事を作って、それを二人で食べるのが当たり前だった。

三成にとっても神楽と一緒にいることが当たり前だった。


いつからだろう、神楽が食事を作れない程多忙になったのは。


いつからだろう、三成と別に食事をするようになったのは。


神楽は刑部が言っていたことを思い出す。



『三成が飯を食わないのだが…どうすれば良いか?』



それは神楽が仕事に追われ、屋敷を離れてからずっと続いていると言う。

神楽は耳を疑った。

もともと少食だった三成だが、食事を取らないということは今までなかった。

ましてや神楽の作った飯を食べないということはなかった。

だからこそ刑部は神楽に相談したのだろう。


「神楽…その佃煮をよこせ。」

「はいはい。煮物も焼き魚もあるからね。」


おかずはすべて三成の好きな具材で、好きな味付けで調理してある。

神楽は重箱から皿におかずを移す。

そしてそれを三成に渡す。

黙ってそれを受け取る三成。

昔の二人の姿と重なる光景に、神楽は不意に胸が締め付けられた。


「…おいしい?」

「フン…聞かずともわかっているだろう」

「そっか、おいしいならよかった。」


口に握り飯を運びながら微笑む神楽。


親子のような、姉弟のような、親友のような、

そんな関係を、

昔と変わらぬ関係を、

三成もまた望んでいるのだろうか。


「三成…ご飯は毎日食べないとダメだよ?」

「フン…毎日など必要ない」

「三成…」

「だが…神楽が戻ってきた時ぐらいは一緒に食ってやる」


三成は平然とそう言ってのけ、握り飯にかぶりついた。

横に座る神楽には、ほんのりと色づく三成の耳が見えていた。



I Need You Because I Love You !



あぁ、そうか。



私は神楽が好きで、神楽が必要で



三成には私が必要で、私はそんな三成が好きで




―だから離れられないんだ―




晴れた空の下、

縁側で頬を赤く染めながら、二人は黙って握り飯を頬張った。



-FIN-

***************


初BSR夢!そして初三成!!
twitterで仲良くしてくださっているチャトラちゃんに捧げます。いつもありがとうございます!

三成かわいいですね!素直じゃない三成がかわいくて仕方ない !!そして三成にご飯食べさせ隊!イエヤスゥゥゥ !!! ←

ちなみに三成はだいぶ前から神楽さんのこと好きだったのですが、それが恋だと意識してなかったようです。そして神楽さんも三成は家族という認識が強かったようですが、今回のことで異性として意識しちゃったはず!

好きすぎる故の依存というか、慕う者に対して熱狂過ぎる三成ならそれもあり得るのではないかと思ったのですが…お、重すぎるかな?;;

ここまでお読みいただきありがとうございました!

2011/07/05


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