BASARA

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※現パロ、高校生設定








今日は冷える。

カーテンをチラッと開けて見れば、濃い藍色に染まった空から白い雪がちらちらと光るのが見えた。


「雪……寒いはずだよね。」


カーテンを閉めて、エアコンのリモコンを拾い、温度を2度上げた。

エアコンを見上げた姿のまま視線を横にずらせば、針が午後10時を示していた。

ローテーブルに置いた携帯を取り、画面を開いてみるが電話もメールも着信なし。


「…まだ帰りついてないのか…」


ため息をついて携帯を閉じると、そのままベッドへとダイブした。

柔らかい布団の感触に体全体が包まれて、それが心地いいのに、心は落ち着かない。


「三成…」


口から漏れた恋人の名前は、自分しかいない部屋に響くことなく消えていった。


恋人の三成は剣道部の主将で、今日は大きな大会があって遠くに行っている。

大会は今日で終わるから今晩帰ってくるって聞いてたんだけど…


「いつもなら、家に帰りついたら連絡くれるのに…」


布団にうつ伏せになったまま、顔だけ横に向けて右手に掴んだ携帯を見た。


「…早く…三成と話ししたいなぁ…」


そう思いながら静かに瞼を閉じた。








コン…


コン…




「…ん…?」


何か小さい音が聞こえて、ゆっくりと瞳を開けた。


「…いけない、寝ちゃってた。今何時…?」


目を軽く擦って壁の時計を見上げれば、あと10分で0時を回るところだった。


「え…?!嘘?!」


慌てて携帯を開いたが、着信もメールもなかった。


「ほっ…よかった…」


胸を撫で下ろし、携帯を閉じれば、再び音が鳴った。


コン…


「え?」


僅かな音。

何か小さい物が窓ガラスに当たる音がする。

それに呼ばれたような気がして、カーテンを開けた。

外気との温度差で結露した窓からでは外の様子が見えない。

窓を開けると、一気に冷たい空気が流れ込み、息を白く染めた。


「うわっ…雪、積もってる…!!」


しんしんと静かに雪が降り、地面を白く覆っている。

漆黒の空から、雪で白く染まった地面へと視線を下して見れば、まっすぐに立つ人影に気が付いた。


「み、三成?!」

「…よかった、起きていたか。」


さっきから鳴っていたのは三成が投げた小石の音だったようだ。


「携帯に連絡くれればよかったのに…!」

「…時間も遅いから、寝ているのではないかと思ったのだ。」


私の部屋は二階で、窓は道側に面している。

三成は制服にコートを羽織った姿でこちらを見上げていた。

白い三成の肌がより白く見えた。


「ちょっと待ってて!今からそっちに…!!」

「いや、いい。時間も遅いし、何より寒い。」

「でもっ…!」

「今日はこれを渡しに来ただけだ。」


そう言って三成がポケットから何かを取り出し、こちらに向かって放った。


「え?!わわっ!」


慌てて両手で受け止めると、それは思っていたより重かった。


「これ…?!」


掌に乗せたそれを見た後、慌てて視線を三成に戻した。


「何を驚いている。神楽にやると約束しただろう。」


私の掌には重みのある金色のメダルが光沢を放っていた。


「ゆっ、優勝したの?!」

「当然だ。」

「っ…おめでとう!!」


心から嬉しくて、夜にも関わらず少し大きい声でそう告げれば、三成はふいっと目線を逸らした。

彼は照れると目線を逸らしてしまうのだ。


「…そろそろ私は帰る。神楽も早く寝ろ。」


そう言って歩き出そうとした三成の背を、慌てて引きとめた。


「あ…!三成!ちょっと待って!」


急いで窓から離れ、テーブルの上に置いてある包みを抱えた。


「三成、これっ…!」

「なっ…?!」


慌てて窓から包みを放れば、三成が慌てて受け止めてくれた。

三成の投げたメダルよりも大きな紙袋。


「これは…?」

「開けてみて!」


三成が袋を開け、中の物をゆっくりと引き出した。

そこには紫、薄紫、白の毛糸が編み込まれたマフラーだった。


「三成、マフラーしないんだもん。風邪ひいたら大変だよ?」

「…神楽が作ったのか?」

「ちょっと形おかしいかもしれないけど…結構頑張ったんだよ!」


三成は私からマフラーに視線を落とし、暫くそれを見つめていた。

そして静かにマフラーを広げると首元に巻いた。


「…気にいってもらえたかな?」

「…神楽。」

「うん?」

「ありがとう…大事にする。」


そう言って三成は、僅かにほほ笑んだ。


その瞬間、壁時計から0時を告げるメロディーが流れた。


「三成…」

「なんだ?」

「メリークリスマス!」


私は三成からもらったメダルを握りしめながら、満面の笑みで言葉を贈る。



「大好きだよ!」



もらったメダルはほんのりと温かかった。






恋人はサンタクロース




「しっ、静かにしろ!!」

「あはは!三成ってば、顔真っ赤ー!」

「ええい、さっさと寝ろ!!風邪を引いたら許さんぞ!!」





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メリークリスマス!


2011/12/25



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