Novel Present&Project

□イースターカクタス
2ページ/4ページ

敵わないと思い知れば思い知るほど、男としては抗ってみたくなるものなのだよ。





『イースターカクタス』




「ねぇ、お父様とお母様って、どちらがお強いの?」
首を傾げて問うたエルモアに、スープを飲んでいたロイドがブフッと噴出し、腹を抱えて笑い始めた。夕食の一コマである。
「こらロイド!」
ひーひー笑いながら最早転がりまわりそうなロイドにシュナイゼルが「汚いよ」と口を挟む。
「私の方が弱いと、そう思っているのだろう?ロイド伯。」
睨みつけられたロイドの笑いは加速する。シュナイゼルがはぁ、と溜め息をついたのをきっかけに今まで黙っていたカレンまでもが笑い始めた。
「カレン、お前もか!」
笑う騎士二人をよそに、今まで静かに食事を摂っていたマオが、「あー・・・シュナの方が弱いよねぇ。」とうんうん頷きながら焼きたてのパンに手を伸ばす。首を傾げたルルーシュは「そんなことない」と不思議そうな顔をした。
それを見ていたエルモアは指を顎に当てて考える。
「どうしてお母様の方がお強いの?」
どうして?と子ども独特の濁りの無い目で問われたカレン、ロイド、マオが一旦笑うのをやめた。
「それはですね殿下。」
一番に口を開いたロイドはシュナイゼルに視線をやりつつ隣のルルーシュを見た。
「お父上がルルーシュ様にぞっこんだからです。」
「言えてる。」
「惚れたが負けって言葉もありますしね。」
続けてマオとカレンが口を挟んだ。エルモアは再びうむむむむ、と考える。
「ロイド、ぞっこんとはなんですか?」
「ぞっこん、というのはその人が大好き、ということです。」
正確には違いますけど。というロイドの言葉に、エルモアは目をきらきらさせた。
「じゃあ、お父様はお母様のことが大好きなのですか?」


・・・。


一瞬の沈黙の後、ロイドがぐりん、とシュナイゼルを見た。エルモアはそのロイドの視線に従ってシュナイゼルにきらきらした視線を送る。
急に振られた疑問に困ってルルーシュを見ると、彼女は少し照れたように笑う。

「そうだね、大好きだ。」




本当は、もう少し不純なものが入り混じって入るが幼い息子にはまだ早いだろう、とシュナイゼルは苦笑した。
最近年ごろになってきたエルモアの『なんで?どうして』攻撃はElysion内でも少し困った流行になっている。確かついこの前までは『どうしてロイドの髪の毛は銀色なのですか?』だった。
どうして、の問いに答えようと躍起になったロイドがDNAの話まで持ち出そうとしたが、あの時はルルーシュの『ロイドのお父様とお母様に似たのよ』の一言で幕を閉じたわけだが・・・


「それで、どうして私とお母様、どちらが強いのか気になったのかい?」


このエルモアの『なんで?どうして』攻撃にはきちんとした理由があるのを、Elysionに住む者ならば学習している。ロイドの髪云々の話は、エルモアを起こしに来たロイドの髪が朝日に光って鏡のようだったから、どうしてその色なのか気になったから、らしい。
幼くはあるが妻に似て賢く育ったエルモアはそのあとカレンの髪の色も、自分の髪の色も“お父さまとお母さまからいただいたのね”と納得をしていた。

質問を投げかけた相手のエルモアは首をかしげて「あのね、」とシュナイゼルの目を見た。


「今日、コーネリア叔母さまがいらっしゃって、お母さまがコーネリア叔母さまにプリンをお出しになっていて。」
「・・・うん。」
「コーネリア叔母さまはお母さまがお出しになったプリンをご覧になって“ルルーシュの作ったプリンには勝てないなぁ”っておっしゃったの。」





_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ