Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□五十嵐隊員の憧憬
2ページ/2ページ



開戦後、僕のヴァルキリーは動けなくなっていて、キョンさんの艦の人に回収してもらいました。
それでハッチに戻ったのは良かったんですが、被弾したときにどこかで頭をぶつけたらしく、血がだらだらと出ていまして。
既に補給艦で手当てを受けていた仲間に指摘されてやっと気づいたんですが、なんともあほな話ですみません。たまたま着艦を見ていたキョンさんに見られて、それでもってグーで殴られました。
「お前なぁ!“命を最優先しろ”と言ったろうが!血がでてんじゃねーかぁぁぁ!」
と、肩を掴まれて前後にゆっさゆっさと振られて、流石の僕もちょっと貧血を起こしそうだったんですが、何とか耐えて。
「すみません。」
と一言謝ったら、
「詫び入れるなら後だ!まずは治療!」
とまた怒られました。


僕はとてもこの上官に好感を持ちました。僕が所属していた大統領統括軍艦隊の作戦参謀は、大統領が守られればどんなに犠牲を出しても厭わない人だったので、どこの艦隊もそれは同じだと思っていたからです。
今回も、大統領を逃がす時間をお前たちが稼げ、というのが指示で、その後のことは指示されていませんでした。
僕たちはそのことについて捨て駒なんだなと理解していましたが、でもキョンさんは違っていたんです。
とても、嬉しかった。









「五十嵐!」
青い制服に身を包んだキョンさんは、トレーの上に細長い形状の、揚げられたジャガイモをしこたま乗せて僕を呼びました。
「今晩は、キョンさん。」
「おう。」
「今日はB定食ですか?」
「そう。なんか久々にコレが食べたくなったんだ。」
「ジャンクフードですか。確かに見ると食べたくなりますよね。僕もB定にしようかな・・・。」
「だろ!?夕方キャンティーン通ったらジャガイモ揚げてる匂いがしててだな。」
「キョンさんらしい。・・・あれ?幕僚総長は今日は一緒じゃないんですか?」
「水曜は幕僚総長と部隊長の軍事会議があるからな。今日は早乙女と一緒。」
「なるほど、だからB定なんですね。」
「あいつ、アレ食えコレ食え五月蠅いんだ。」
「あはは、それはでもまぁ、分かる気がします。キョンさんまた痩せたでしょ。・・・部下としては上官に休暇くらい取ってもらいたいんですよ。」
「俺としちゃ部下には血が出るまで頑張ってほしくないがな。」
話していると、やはり同じ定食を持った早乙女中佐が回りをきょろきょろしていた。
「キョンさん、中佐が探してるみたいです。」
するとキョンさんは笑って、「あいつ目立つよなぁ。」とため息をつきました。
「じゃまたな。」
「はい。今日の九時にレポート持って部屋に参上します。」
「おう、無理すんなよ。明日でもいいんだからな!」
キョンさんはそう言って笑うと、中佐のところに駆けて行ってしまいました。



「・・・実は作戦参謀の資格を取ろうかと思ってるんです、なんてまだ言えないなぁ。」


自分はまだひよっこなので、目下の目標は凄腕のヴァルキリー乗りになること。そしていつかは絶対艦に乗って、多くの部下の命を無駄にしない作戦参謀になること。
あの歌を歌った女神は結局誰かわからなかったけれど、キョンさんに追いつけるように日々鍛練をしていきたいと思います!




END.

_
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ