Novel HARUHI ISM

□ティラミス
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「ティラミスの原点って知ってます?」
「あぁ?」
本日12月24日。クリスマスイブ。聖人のバースデーであるにも関わらず恋人達がいちゃつく日となっってしまった日本。当然のことながら俺だってそれくらいは知っている。
だから今日だって泣きつく妹に「団活なんだ」と言い訳をして、ハルヒが「クリスマスイブに遊ばないなんてなしだわ!」と叫んだので二人でディズニーランドに向かって乗り物に乗りまくった挙句、とにかくパレードと花火は外せないとその時間帯まで待ってそれらを見て、帰ってきた。古泉宅に。
はっきりと言わせてもらおう。俺は疲れていた。
雪が降るんじゃないかと思わせる外からぬくぬくした部屋に入ったのは午後10時を回っていて、古泉には悪いがその時点で俺は眠かった。でもそれでは悪いだろうと思ってシャワーを借りて湯船に浸かってほっとして、頭をガシガシとタオルで拭いていたら目の前に大きなティラミスが出てきたわけだ。そしてそれを二人でつつくべくスプーンをとったところ、古泉が先程の質問をしたのだ。・・・あぁ面倒だ!

「・・・しらん。」
率直に意見を述べると、古泉は笑いながら俺の皿の上にティラミスを落とした。
「ティラミス、というのは元はイタリーだということを聞いたんです。」
「へぇ。」
「語源はTiamoで、日本語的な意味は“貴方を愛しています”ということらしいです。ですから僕は、今日一日僕のために涼宮さんを連れまわしてくれた貴方のために日ごろの感謝も込めて作らせていただきました。」

おれはちょっとばかり驚いた。綺麗に丸い形をしている大きなティラミスを、古泉が作ったことにだ。だってコイツときたらまともに米は炊けないし、フライパンの上のホットケーキですらひっくり返せない料理音痴なのに。
怪訝な顔をする俺に古泉は苦笑して、「ほとんど荒川さんと森さんが手を加えましたが僕が作ったということにしてください」と俺の顔を覗き込んだ。
それに頷いて、ティラミスを一口食べる。ちょっとだけブランデーの味が濃いソレはでもあまり甘くなくてちょうどいい。1ピース食べ終わる頃には古泉も食べ始めていて、二つ目を取って口に運ぶと、すこしだけブランデーの香りが強くなったように感じた。
なにもしてないのに頬が熱くなって、ブランデーに酔ったか?と体をよじると目の前に座る古泉がじっと俺を見つめていることに気付いた。フォークを持ち上げて机の上に頬杖をついている古泉は嫌味なくらい美人だ。更に体をよじると、今度は全身が熱くなった。・・・本格的に酔ったな。
古泉の視線から逃れるように体を縮めたが、あの瞳の魔力から逃げ出せずにじっと見返していると、古泉の目がスッと細められた。
そして顎を引っ張られていきなり深く口付けられた。ぬちゅ、と静かな部屋にいやらしい音が響いて、机越しにキスをする。それがとても心地良くて熱中していると、古泉は一旦唇を離して立ち上がった。そして俺を抱き上げると寝室のベッドの上に下ろした。
シーツからも枕からも古泉の匂いがしてもうどうにかなりそうな俺の耳に、古泉は唇を寄せた。
「もういいでしょう?限界なんです。」
切羽詰った古泉を見て、俺は一も二も無く頷くと、とたんに酷く乱暴な口付けが落とされた。
「今日は寝かせません。心行くまで付き合ってもらいます。」
俺が頷くのと、古泉が俺のズボンのチャックを開けるのは同時だった。


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