Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□出会い
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バチャ、と袖に掛かった紅茶を見て古泉は懐かしいなぁ・・・と呑気に思った。
そうしている間にも「ほげー」だとか「うっわー」だとかの声が聞こえてくる。
あの時は・・・まぁ意図的に掛けられましたしね。と思っていたら、濡れた側の服を思いっきり引っ張られた。

「おい古泉大丈夫か?火傷とかはしてないだろうな!?」

焦って聞いてくる彼・・・彼女?彼は(外見がそうなのでそう呼びましょう。)近くに置いてあった布巾でゴシゴシゴシと乱雑に軍服を拭った。・・・あぁ、そんなことしなくても大丈夫なのに。


「大丈夫です、火傷なんてしてないですよ。」


僕は女神に愛された人間ですからね。


そう小声で言うと、彼はバツが悪そうに唇を噛み、そしてはにかんだ。










彼との出会いは、今から丁度3年前だ。
院から出たばかりの僕は、博士号という資格を有していたため、すんなり軍に入れた。
そして士官学校は一年足らずで卒業。同学年からやっかまれてたどり着いたのは、国連軍会長の部屋だった。
大きな溜め息を吐き出されながら言われた台詞は今でも覚えている。

『お前、子どもを作れ。』

あんまりにもあんまりな命令だ。しかも相手は“B”の女神。高位にもほどがある。
当時、酷いやっかみを受けていた僕には既に女神だろうが超人類だろうがごみだろうがもう人という人が信じられなくなっていた。
 聞けば、BはBでもよくメディアに載るほうではないという。


“イシス”


真理の性格、と言ったところか。彼女はメディアに顔を載せないことで有名だった。しかし誰しも一度は聞いたことのあるあだ名だ。
彼女は戦場に単機で登場し、傷ついた者たちを歌声で癒す。時にはその声を使って相手を攻撃したりもする、戦場にいる者たちにとっては結構身近な女神だった。
涼宮総司令官も彼女の部下にとってみれば親しみ易い存在だったが、イシスはその点見えそうで見えない神秘のヴェールに包まれていた。

『何故僕が彼女と?』
『女神の数が減ってるのは知ってるな?』

それはそうだ。幾度の戦争によって、戦利品にされる彼女たち。生死は相手の都合によって決められたが、彼女達は誇り高い人種でもあった。
“捕らえられるくらいなら死を”
そうやって取引された女神のほとんどは、自身が有する力で死を選んでしまう。だから女神の数は激減した。

『ええ。』
『幸いにも、国連軍に所属するA〜Eランクの女神は七人存在する。だが、そのうちの一人はそもそもそういう機能がなく、トップは恋愛は病気だと抜かしやがる。頼みの綱のCランクは優しすぎて相手を選べない。
他の三人は相手は自分で決める、の一点張りだ。』
『・・・はぁ。』
『涼宮は反対したが、本人が了承したからな。で、お前にその幸運な座を与えてやろうというわけだ。』
『お断りします。』
『・・・なら、上官命令だ。』



まだ会った事もない女神を好きになれるとは到底思えなかった。それ以前に、自分は人を信じられなかったのだ。


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