Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□私の彼は究極のわからず屋
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もりもりっと盛られたオムライスを目の前に第七艦隊参謀殿と国連軍Zionに配属しているアタッカーの中佐殿はそろって溜息をついた。向かい合わせに座った彼らは、ほこほこと湯気を立てる、ケチャップがとろとろのったその黄色い物体に遠慮がちにスプーンを突きつけた。

「・・・ほんとう、何とかならねーかなぁ。」
艶やかなサラサラとした濃紺の髪の毛を後頭部で赤い紐で結んだ―――彼、早乙女アルト中佐は、オムライスをいじる手を止めて参謀殿―――キョンを見上げた。見上げられた参謀殿は眉間に皺を寄せて溜息を吐く。
 接点がなさそうなこの二人には、実は共通した悩みが存在した。
「・・・何とかなるくらいならずっと前にそうしとる。大体、あいつは目が可笑しいんだ!」

バンっと叩かれた机に、新人が「ひいぃ!」と声を上げる。そして古株の幹部たちは「また始まった・・・。」とげんなりして本日のA定食オムライスをスプーンで咥えた。

「一回眼科に行った方がいいんじゃないのか?」
「あー。やった、それ。そしたら、“俺がいつも目を使って疲れてんの心配してくれた?可愛い”とか何とか言われて・・・。」
「いい、皆まで言うな。そうか、スナイパーだもんな。お前のところ。」
「でもお前も言われそう。ほら、コンピューターがどうとか。」
「考えたくもないわ!あぁ忌々しい!」


週に一度、水曜日の昼間に始まるこの会議は、実はここ二年ずっと続いている。
そんなに嫌なら別れればいいのに、と聞いている者たちは毎度思うのだが、それを言えた人物はいない。
なぜなら、愚痴の対象である彼らは、通称“女神の艦”第七艦隊所属の幕僚総長と、国連軍の中でも艦隊に属さない究極のお助け部隊、国連軍Zionの双璧の一人、一撃必中のエーススナイパーだ。「別れたらいい」とか迂闊に言った日には、宇宙の藻屑にされかねない。全力でいやだ。そんな理由で死にたくない。絶対いやだ。
何事も平穏が一番である。


「ほんとう、どうにかならんのか・・・?」
「あ、」
「・・・ん?」
「今思いついた。“今度ひっついたら嫌いになるぞ”。鶴の一声作戦。」
「・・・ありきたりだがよさそう、だな。」
「だろ?」
「じゃあ試してみることにする。そろそろ時間だ。・・・じゃまた来週にな。死ぬなよ!」
「了解。」


いつの間にか綺麗に食べ終えたオムライスを片づけて二人は去って行った。

「これで今週はあの二人が荒れるな。」
大きくため息を吐いた上官に、新人は首を傾げたが、その後新人たちは身をもってその言葉の意味を知るのだった。



END


「なぜです!なぜ嫌いになんて・・・!」
「へぇ、俺にそんなこと言うの、姫。」

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