Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□宝物と彼
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今日の分の報告書を書き終えた俺は、明日に久々の有給を無理やり取らされた。

「全く、休んでないわけないのにな。」

深々と溜息を吐いたところであのハルヒが首を縦に振る筈がない。大体からして部下の有給休暇のチェックなんて何であいつしてるんだ?と苦々しく思ってしまう。
―――まさか、古泉が何か言ってないだろうな。
先日、「貴方はもっと自分の体を大切にするべきだ」と抱きしめられながら悲痛な声で言われてしまった。ただ飛んで歌うだけ、でもってあとは作戦で相手に勝つだけ。それだけなのに、あいつは疲れていると思うのだろうか。人類よりは頑丈な作りなのに、よもや忘れたわけではあるまいな。謎だ。
そうは言ったところで、久々の有給をどうやって過ごすかで俺の頭はいっぱいである。
「久々にごろごろするかな。」
本当言うと、子どもの墓参りに行きたいが、S.B.に乗ることをはたしてハルヒが許してくれるかどうか。いや、あいつは許してくれそうだが、古泉がぐちゃぐちゃ言いそうだ。
―――静かな時に会いにいきたいし。
母親らしいことは全くできなかったが、それでも今でも忘れられないのだ。一生忘れるつもりもない。
握り返した小さな手を、あの輝かしい日を俺は宝物にしたい。

プシュン、と声紋と指紋と網膜で自室の鍵を開ける。少しふらついてしまった体に叱咤しようとしたら、後ろから腕を引かれた。


「帰ってたのか?」


眉間に皺を寄せた男は、そのまま俺を引き寄せた。



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