Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□PHASE-2. 二分する世界
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宇宙国連合軍に属するスペースコロニー群、通称“プラント”の最高評議会議長、イザーク・ジュールは自身が継いだジュール家の本宅その自室にいた。
白銀のストレートの髪を顎のラインで切りそろえた彼は、若干32歳にして多くのコーディネイター達の安住の地プラントを3年治め続ける執政者である。

小さく息を吐いた執政者は、自室に設置された延命ポッドを見つめる。そしてその中に眠る彼の妻の頬を機械越しにそっと撫でた。

「アスラン、前の大戦から二年と経っていないというのにまた人は争いを始めてしまったぞ。」

コールドスリープで眠らされた彼の奥方は、過去五回に渡る大戦で『ZAFTの女神』とまで謳われた英雄である。
常にナチュラルとコーディネイターとの和平を唱え、プラントを守るため戦場に立っていた彼女は、一年と半年前に起きた第五次宇宙世界大戦で敵の『女神』の攻撃を受け撃墜。生きてはいたが、眠ったような状態から今日まで目を醒ましていない。
 美しい翡翠を思わせる大きな瞳は閉じられ、藍色の髪は艶を無くし、その肌は薄らと青ざめている。もちろん、彼女の夫であるイザークの言う言葉に返答は無い。
しかしそれでも彼女の夫は彼女の事を愛していた。だから彼女が目覚めたとき、彼女がずっと切望していた平和な世界にするために、イザークは自身の時間を削いででも戦争の拡大を阻止しようと努めている。

「今日は少しだけ時間が取れたんでな。マティウスまで戻ってきた。お前がまだ生きていて良かった。そろそろ行かねばシャトルが出てしまう、が。―――名残惜しい。」

愛しげに彼女を見つめるアイスブルーの瞳は熱を孕んで彼女を包んだ。

「お前の声が聞きたい。」

機械越しに妻に口付けを贈った彼の耳に扉をノックする音が聞こえる。イザークは顔を上げると、厳しい声で一言「入れ」と扉をノックした者に向けて告げた。
その言葉に、彼の秘書兼護衛であるシホ・ハーネンフースはサッと綺麗に敬礼をとった。


「議長、そろそろお時間です。」





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