Sagittarius 9:00 p.m.☆ Don't be late!

□PHASE-3. 『女神』
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僕は現在目の前にいる宇宙国連合軍会長に向けてこれでもかと目を見開き凝視した。会長はやれやれ、といった風情で煙草に火をつける。大きな溜め息を吐くと同時に白い煙が天井に伸びた。


「聞こえなかったのか?ならもう一度言ってやろう。『古泉一樹、お前は第七艦隊所属の幕僚総長に任命された。総指令直々に移動嘆願書が出されている。』と言ったのだが。」


目を見開いたままの僕に再び会長はそういうと、「違うか、その前だな。」と口角を上げた。
「お前がどこの国の者であろうと、この国連合軍に所属するからには軍事特例A項が適応される。優秀な遺伝子は後世に残しておきたいからな。お前は第三世代のコーディネイターにしては優秀な存在だ。そういった話は何も今回が初めてではないだろう?」
そう問いながらじっとりと会長は僕の目を見る。灰皿に煙草を押しつけて「何が不満だ?」と漏らした。
「確かに普通の女ではないが、『女神』だ。あの女もそれを承諾している。正直、お前が厭う理由はない。さっさと腹をくくれ。」

言葉の端に潜む棘に気付かないふりをしながら、僕は首を横に振った。


「お断りします。」


息を飲んだのは会長の後ろに控えていたZAFTの一般兵だ。会長は口角を上げると、バンッと机を叩いて立ち上がった。
「これは命令だ!お前に拒否権は無い!」
どなり声を上げた会長に怯まずその目を見返す。
「いくら命令でも、聞けるものと聞けないものがあります。これは人権の侵害だ!」
声を荒げた僕に会長は「この頑固者めが」と言いながら椅子に再び掛けた。
「平行線ですね。」
「今日の所は退いてやろう。会議もあることだしな。だが覚えておけ。次は“はい”と言わせてやる。行け、顔も見たくない。」


会長はそう言うと再び煙草に火を付けた。

「失礼いたしました。」

敬礼をとった僕を一瞥もしないでパソコンを見る会長にイラッとしたが、そのまま会長の執務室を後にした。



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