Novel Present&Project

□トマトジュースより僕にして!
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ふらふら〜ふらふら〜と左右に揺れながら廊下を歩くその人物を見て僕は“やってしまった”と目頭を押さえる。
・・・そういえばここ数日彼は僕に近寄って来なかった。前回の『食事』から早一ヶ月強。いくらなんでもこのままだとよろしくない。僕は消火器にぶつかってよろけた彼の右腕をぐっと掴んだ。
「今日の学校はここまでです。・・・文芸部室に行きましょう。」
昼休み終了七分前。彼の手には飲みかけのトマトジュース。
「平気だ。」
僕を映した瞳が真紅に染まる。出てきた言葉と反して限界だ、と告げる体。
「平気な訳ないでしょう、行きますよ。」
力の入らない体を半ば強引に引きずって部室に向かう。その道中、僕はひたすら後悔していた。
「お腹が空いたら、言って下さいって何度も言ったでしょうに!」





――――突然な話で大変申し訳ないのですが、彼・・・キョン君は吸血鬼です。
僕が彼のこの特性を知ってしまったのは、キョン君に超能力者であることをカミングアウトした日で、差し込む光の中彼はトマトジュースを飲みながらぼやきました。
『・・・古泉。お前は今“俺は一般人だ”とそう言ったが、それは間違いだぞ。』
視線を下に言う彼が酷く疲れているように見えた僕は、彼のその言葉を促しました。
『僕の機関の調べではあなたは一般人ですよ。・・・それ以外に理由がおありですか?』
質問した僕に彼は笑うと『じゃあ、その理由を聞いたらお前は俺に協力するな?』と逆に質問を返しました。
今考えると、そのときの彼はとても切羽詰まっていたのでしょう。そして僕は、機関の調査を掻い潜った彼の秘密が知りたくて、ひとつ頷きました。
そこで知ったのがこの事実だったのです。



昼休みが終わるチャイムの音が鳴る頃に、僕達は部室に着きました。誰もいない部室塔を歩く最中、キョン君が倒れかけたので僕は彼の片腕を持って支えています。

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