□苦痛も涙も愛しさに負けて
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あなたは優しく手を差し延べてくれはしなかったけれど、それでよかった
あなたが私を知ってくれているように、私もずっとあなたを見てきた
無口な瞳も
固く閉ざした唇も
迷わない背中も…
全部知っているわ
振り返らないと約束したから、前だけ見て突き進んで行く
迷わないと決めたから果てまで貫き通す
そんなあなたが今も眩しい
ねえ…
少しだけ、私の我儘をきいて?
いつか、
きっと…
きっと……
優しく手を繋いでください
あなたが私の幸せを願ってくれたように、私もずっと忘れないから…
ねぇ、十四郎さん
愛しています
―――――……
「……………?」
「トシ、どうした?」
「…いや、なんでもねぇ」
アイツの声は、相変わらず澄みきって、穏やかな口調をしていて………
縁側に出て空を仰いでみれば、空が笑ってくれた気がした
今もお前は微笑んでくれるか…?
-end-