Prince

□明日の話をしよう
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顔にかかる髪をかき上げながら上体を起こした。同じく隣で起き上がった仁王を背中で感じながら散らばった服を拾い集める。また砕け散った心を拾い集めるように。

(少しでも、)

君は私のことが好きかな。
本当に、好きなのかな。


『怖いんじゃ』

初めて触れた日に、仁王はそう言って揺れる瞳を臥せていた。


終わることが怖いと。だから何も言わないで何も始めないで期待などさせないで、傍にいてくれと彼は言った。

今思えば矛盾や穴だらけだな、と思うけれど、私は彼から離れられない。愛しすぎる。

たとえ恋人じゃなくても。
名前すらない関係だとしても。


「、なあ…」
「うん?どうしたの?」
「あの、な…」


仁王は控え目に私を見つめる。不安そうに寄せられた眉にきゅっと胸が締まった。いつまでだって傍にいるのに。離れたりしないのに。

仁王が私を信頼してくれる日まで私はただひたすら待つ。


「あの…さ、俺ら、な」

いつもは確かめるように私に触れる仁王が、その手をそわそわと所在無さげにさ迷わせながらぽつりぽつりと言葉を落としていく。

「俺ら、」

うん、と促すように頷いた。


「付き、合わん?」

きゅうっと手を握りしめて仁王は訊いてきた。付き、合う?

仁王の言葉をゆっくり理解した途端に、涙がぽろりと落ちた。

付き合う、の?恋人という名前の絆で繋がるの?仁王は私を…信頼してくれたの?


「に、お…っ」
「…っ、泣かん、で」

やっぱり不安そうに私の頭に触れる仁王の手は温かい。その体温はしっかりと存在した。

「うん…っ、すき、すきだよ!ありがとう…っ!」



明日の話をしよう

(信じてみよう)
(僕らの明日を、力を、絆を)



私たちはくしゃくしゃの笑顔でキスをした。





◇◇◇

私たちの笑顔は何よりも確かで、力だ。

東北地方大震災の被災者並びにすべての日本人に捧ぐ。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りします。


2011.3.14 ピアス


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