イザアス好きさんに28題

□08:心配
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【08:心配】



新システムを搭載した機体のデモンストレーションを兼ねたシミュレーション。
いつもの調子が出ず、イマイチな結果を手にアスランは機体を降りた。
一昨日、夜遅くまで新しいマイクロユニットを組んでいたからだろうか…
でも無理をしたつもりはないし、第一、昨日は何ともなかった…と思いながら歩いていると
進行方向10メートル先、腕を組んで壁にもたれ掛かる銀髪の同期の姿があった。
どういう訳か、いつも成績で競ってきたりチェスで対戦させられたり
こちらが勝つと気に喰わないくせに、成績が落ちると我が事のように苛立ったりもするため
人付き合いに淡泊なアスランが、あまり関わりたくないと思う数少ない人間だ。
どうせ今も、さっきのシミュレーションをモニタールームで観ていて
勝手に腹を立て、不様だ何だとわざわざ言いに来たのだろう。
そんな相手に自ら近付きたくはなく、アスランは前方を見据えてイザークの前を通り過ぎた。

「……おい」

無愛想な声に、さらに機嫌を損ねたかと後悔したが仕方がない。
観念して振り向くと、投げて寄越されたミネラルウォーターのボトル。
慌てて受け止めたのを見届けて、ふんと身体を反転させイザークは去っていった。

「……なん、なんだ?」

構えていた分、肩透かしを喰らったようで何だか居心地が悪い。
訳が分からず首を傾げていると、イザークが消えた角からニコルがやって来た。

「アスラン、大丈夫ですかっ?」
「え?」

血相を変えて…とまではいかないが、心配そうに駆け寄ってくる姿に
だが、一体ニコルが何を心配しているのかが分からなくてますます困惑する。
見るとニコルもまた、ボトルをその手にしっかりと握りしめているのだから尚更。

「あ、もう水分補給してたんですね、よかったぁ。心配で走って来ちゃいましたよ」
「え…あ、あぁ、さっき…」

イザークに渡されたと続ける前に、ニコルの不安げな言葉が届いた。

「さっきの新システム、えっと高性能生体感知ポッド…でしたっけ?発熱していて脱水症状の前兆ありなんてびっくりしました」
「……ぇ…」
「見た目には全然分からないのに…特にアスランは、自分から不調とか言わないじゃないですか」

そう言って、これもどうぞと渡されたボトルと先からあるそれを交互に見つめる。
もしかして…いや、まさかそんなはずはないけれど、でも、もしかして…

「…ニコル、その結果はどこで?」
「モニタールームです。情報が自動的にサブモニターに表示されて、それを医務の方が解説してくれたんです。
 で、もうみんなびっくりしちゃって。イザークは悪態ついて途中で出ていきましたけどね」

もしかしてと思う気持ちが膨らんで、きっとと思う自分がいる。
居心地の悪さはいつの間にか気恥ずかしさへと変わり、知らないうちに頬を染め
熱が上がったんじゃないかと心配するニコルの声に、ようやく部屋へと足を動かす。


これはやはり、あとで礼を言うべきなのだろうか。





「くそぉっ!!」

ボスっという音を立て枕が壁に沿って落ちるのを、ディアッカはため息をつきつつ見遣った。
短気なルームメイトのおかげで、自室だというのに寛ぐ事もままならない。

「今度は何だよ。珍しく絶不調なアスランが見れて面白かったじゃん」
「うるさいっ!!…軍人のくせに体調管理もろくに出来んようなヤツに俺は勝てないのか?!」
「あー…そういう事ね、機嫌が悪いのは」

何を言っても火に油だと付き合いの長さから判断し、部屋から逃げるディアッカ。
1人になったイザークは、その綺麗な銀糸を掻き乱して頭を抱えた。

違う違う違う、それもあるがそれ以上に腹立たしい事がある。

「あんな機械に負けたと悔しがっている、この気持ちは何だ!?」

訳の分からぬ葛藤にイザークは感情を持て余し、結果、今度は時計が宙を飛んだ。



fin.
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