イザアス好きさんに28題

□19:やれやれ
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【19.やれやれ】



「あー…2ーA、アスラン・ザラ、頼むから至急生徒会室まで」

聞き慣れた声の聞き飽きた調子がスピーカーから頼りなく流れ
大きな溜め息をつきながら、濃紺の髪の男子生徒が立ち上がった。

「大丈夫?アスラン」

その前に座っていた生徒が食事の手を止めて気遣わしげに尋ねる。
さっきまで賑やかだった食堂の空気までもが、心配そうに鎮まっている。

「俺よりディアッカだよ、キラ」
「いや、一応あの人も心配なんだけどさ…その…」
「とにかく行ってくるよ」

友人の言わんとしている事は分かるが、今はそうも言っていられず
幸か不幸か、たっぷりと午後の授業開始まで時間がある事を確認してから
まだ3分の1ほど食事の残っているトレイを手に、アスランはその場を後にした。



生徒会室の前、悪いと小さく片手を顔の前に立てたディアッカに迎えられたアスランが
本当にそう思っているのかと睨みながら中へ入ると、思ったよりはマシな光景がそこには広がっていた。
その奥の事務机の向こう、目が合ったのは、腕を組み踏ん反り返って座るここの現主。

「…何故貴様がここにいる。」
「だったら俺じゃなくてディアッカに言ってくれ、校内放送で呼び出されるのはごめんだ」
「バカ正直に出向かなければいいだろうが」
「出向かなかった時に周りに当たり散らしたのはどこのどいつだ」

その言葉にぐっと詰まったアスランより1つ年上の人間は、この高校の生徒会長であるイザーク。
全校生徒だけでなく教師からも一目置かれる彼と対等に物を言い合え
時に言い負かす事ができるのは、アスランだけだったりするのだが。

「で?今度は何だ、イザーク」
「………」
「チェスか?オセロか?ルービックキューブか?それとも腕相撲か?」
「………」
「………」
「………」
「……用がないなら帰るぞ」
「待て、誰が帰っていいと言った。どれで負かしてやろうか考えていただけだ!」

踵を返そうとした瞬間にそう怒鳴られ、アスランの足が止まる。
 
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