イザアス好きさんに28題

□06:休日
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「さぁ、どうする?」

コレが夢ならばと思い、そうでなければいいのにと願った。



【06:休日】



「……ん………」

眩しい日の光に瞼越しに射抜かれて、顔を顰める。
昨日は寝る前に手を伸ばした課題が思いのほか捗って
布団に入った時には、明け方近くになっていた。
だから、もう少し寝ていたいというのに
うっかりカーテンを閉め忘れたか…と
自分を呪い目を開けようとした、その時。
瞼の裏が薄紅から、再び黒へと変わった。

太陽が雲に隠れたにしてはあまりにも暗いと戸惑いつつも
急いて起きる必要がなくなったと安堵して
アスランは布団を手繰ってまどろみへと沈む。

が。

ふと、誰かがいる気配がした。それも間近に。

すぐさまに起きようと開いた目は
…だが、それよりも早く暖かなものに覆われて
力を込められたそれを掌だと理解した時には
首筋にピリっとした小さな痛みが走った。

「……っ」

僅かに遅れて吸い付く音がして、アスランは歯を食いしばった。
この手の持ち主が誰かなんて、もう分かっている。
抵抗をしようとした腕は、耳を甘噛みされてまともに力が入らない。
何をするんだとすぐにでも怒鳴ってやりたかったが
寝不足の疲労した身体と起き抜けには強すぎる刺激に
口を開けば、あられもない声が出てしまいそうで
そしてその声が、乗り上げてきた人間を煽り
あとが大変になるという事を身をもって知っているため
今は、恥ずかしさと悔しさをただ堪えるしかなかった。

その快感に耐える姿の威力は、まだ知らないらしい。

いつの間にかTシャツはたくし上げられていて
首、鎖骨、肩、胸、鳩尾…と熱が辿っていく。
口付けが降るたびにさらりと触れる髪さえも
今のアスランにとっては刺激でしかない。

一際長く強いそれの後、唇と髪が胸から離れ
きつく閉じていた目の上から掌が退いたのを見計らい
詰めていた息を吐き出しながら瞼を押し上げると
日の光を背に受けて、銀髪の男が婉然と笑んでいた。

「……イザ…ク……」

寝起きばかりでなく掠れた声で名を呼ぶと
その精悍な顔立ちが、低く艶を含んだ声を紡ぐ。

「最近、構ってやってなかったからな」
「だ…からって……こんな…」

確かにここ最近、アスランは試験や生徒会業務が続いて
帰宅時間が大学生のイザークよりも遅くなる事が多く
家にいても、部屋の中で黙々と机に向かってばかりいた。
と言って、朝っぱらから襲っていいという理由にはならない。
息を整えつつ何とか睨んで言った抗議の言葉は
元来短気なイザークの機嫌を損ねるには十分なもので。

「ほぉ…まだそれだけの余裕があるのか?」

眇められた薄氷色の瞳に、しまったと思ったがもう遅い。
反応していた下肢にイタズラに触れられ、声が上がる。

「やっ…イザ、ク…やめ……っ」

浮きそうになる腰を叱咤し、身体を捩って抵抗すると
さっきが嘘のようにすっと手が離れていった。
望みどおりにはなったが、既に身の内で疼いている熱。
顔へと伸びてきた手に思わずぎゅっと目を瞑ると
知らず流れていた涙を拭われ、汗で張り付いていた髪を払われ
肌を掠めたその指先にまで吐息が漏れたのを
ひどく愉しそうに見やってイザークが耳元で囁く。

「さぁ、どうする?」

一層の悔しさと恥ずかしさ、そして愛しさを感じながら
不敵に微笑んだその頬に白旗を揚げ、アスランはゆるゆると唇を寄せた。



fin.
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