イザアス好きさんに28題

□13:別れ
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【13.別れ】


白いシーツの波に身体を預けそっと腕を這わせると、程なくしてぶつかり捕らえられた。
その暖かさに未だ虚ろな視線を移すと、確かな力が込められたのを感じる。
一糸纏わぬ姿の今、包み込まれた手首だけが酷く熱い。
さっきまであんなに互いの熱を分け合い交わらせていたはずなのに
全ての意識が手首だけに向けられているかのように、他はどこも穏やかだ。

「行くのか」

言葉と共に、込められる力が一層強くなる。

「本当に行くのか」

気怠さだけではなく答えられずにいると、再び低く響く声。
それにアスランはゆっくりと、だが固く頷く事で答えた。
イザークの視線がこちらを向いているかどうかは、手を見つめるのが精一杯で分からない。
が、気配や振動でこの音のない返事は伝わっていると確信できた。
戦場を戦い抜いた同志としても、それだけの力量を信頼する事は容易だったし
こうして体を重ねるまでの関係である事が、何よりも信用を与えた。
行きずりで行為に及ぶほど二人は大人でもないし、興味本位の子供でもない。

「逃げるのか」
「そうなるな」

今度は声に出して答えたら、次の瞬間、強引に腕を引かれて簡単に俯せの身体が返された。
衝撃に歪めた顔を上げれば、馬乗りになったイザークの双眸が青く揺らいでいる。

「卑怯者」
「これ以上、混乱を招きたくないんだ」
「臆病者」
「ここ以上に恐ろしい場所はないよ」
「そして無知だ」
「無知?」

それは何かと問い掛けるより早く、その首筋にイザークが噛み付いた。
いや、噛み付かれたようにアスランが錯覚したのは熱さと痛みのせいで
普段は何か神聖なもののように事を行う彼からそれは想像できず、ただ驚きが生まれる。

「イザークっ」

声を上げ身体を捩り抵抗してみせたが、びくともしない。
以前なら体術も自分の方が勝っていたのに、なんてどうでもいい悔しさと今の気怠さに腹が立つ。
だがそんな考えも、次にイザークが取った行動で霧散した。
鎮まっていたはずの下腹部をゆるりと撫でられ、更に下の奥、硬い感触があてがわれたかと思うと
何の躊躇もなく質量を伴うそれに貫かれて、細い腰が逃げを打つ。

「ひ……いっ」

あまりにも性急な動きに、アスランはついていく事ができなかった。
先程の余韻と残滓が、更に体力と思考を奪い恥辱を誘う。
ガクガクと揺さぶられる中で捕らえる事ができた腕に無我夢中で縋れば、その爪で僅かに血が滲み
白い肌に酷く扇情的に映える様が、きつく光を放つ薄氷の眼をより恐ろしく見せる。一体、今のイザークは何を考えているのか。
居竦められ自由の利かない身体は、思うがままに貪られ
声にならぬ吐息と悲鳴と喘ぎが入り交じった唯一の抵抗と思しきものさえ
呼吸すら奪い尽くす勢いで与えられる口付けに遮られて、すぐそばなのに届かない。身体中を彷徨った無理やりの快楽が解放されるまで、そう時間は要さなかった。
荒い息を繰り返していると、イザークが、今度は壊れ物のように触れてそっと抱き締めた。
 
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