X*A SS

□Gossip
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ちょっとからかっただけだって。

周りの奴らがマジで欝陶しくて、目の前のコイツがありえないくらいに鈍感だったから。


.゚* Gossip *。・


「なぁディアッカ、…アスラン・ザラってどうなの?」

新たな任務拝命のために訪れたヴェサリウスで顔馴染みを見つけて
ラウンジで話に花を咲かせていると、突然、声を潜めて尋ねてきた。

「どうって、何が?」
「ほら、イロイロ噂があるじゃん?そこんとこ、真相はどうなのかなってさ」
「何で俺に聞くんだよ。お前、同じ艦だろ?」
「あのな、俺は緑なの。こっちにゃ気安く話し掛けられる赤なんていねぇし
 第一、あのアスラン・ザラだろ?おいそれと隊長との仲なんて探れるかっての。
 その点、お前は何でか赤だし任務でよく一緒じゃんか。だからさ」
「何でかは余計だっつの」
「なぁ、何か見たり聞いたりしてねぇの?」

頼むよ、と肩に回された腕にわざとらしくため息をついてやるが効果はない。
どうにも人間ってのは下世話な誘惑に弱いらしい…人の事は言えないが。

「そう言われてもな…」
「あ、ヤベっ」
「あ?」

突然そう言って離れたのを不思議に思っていると、背後から足音。

「ディアッカ」

振り向いた先、噂をすれば何とやらとばかりに立っていたのはアスラン本人だった。

「良かった、隊長から説明の不備があるから伝えるよう言われて探していたんだ。今いいか?」
「え…あー、それってここで平気な内容?」
「あぁ、それは問題ない」

そう言い、アスランは俺の影で青くなってるヤツに小さく詫びてから
持っていたモバイルパソコンをすぐそばのテーブルで開いて説明を始めた。

気付けば近くにいた緑服が数人、興味津々といった様子で聞き耳を立てている。
ヤツらが聞きたいのは難しい説明ではない、あらぬ妄想を掻き立てる材料だ。
規律の厳しい乗艦任務では、武勇伝はもちろん、噂や失敗談までもが娯楽の1つで
さっき小声の中で強調された“イロイロ”な事を、飢えたように欲するのは仕方のない事。
その対象は有力者の子息やエースパイロット、容姿端麗など目を引く者達で
殊、アスラン・ザラは、条件が揃っていながら情報が少ない…
あまり親しい人付き合いがない事から関心を煽り、話題に上る事が多々あった。
特に今旬のネタは、女が少ない軍においてはありきたりというか、
『クルーゼ隊長とアスラン・ザラが寝ているんじゃないか』というモノ。
同じく顔は綺麗な銀髪の悪友がその手のネタに巻き込まれないのは
アスラン・ザラの謎めいた部分は庇護欲をそそられるだのウダウタ言うヤツもいるが
言ってしまえば、イザークよりも女顔で世間知らずに見えて征服出来そうだからと
命知らずにも勘違いをしているヤツが多いのだ。知らないってのは怖い。

「…がここにある。ちょっと図が小さいんだが」

指で差された画面を覗き込むと視界に入る、いつもより近い距離の端正な顔立ち。
なるほど、確かにこりゃ可愛いかもねと俺は改めてその造作に感心した。
実を言うと、周りから思われる程に親しく話した事はこれまで一度もない。
アスランの堅くて理論的でお綺麗な考え方は好きではなかったし
イザークと一緒になって対立しているくらいの距離が、ちょうどいい気がしていたからだ。

…ちょうどいい?

何がちょうどいいんだ?

なんて自問していると、こちらを仰ぎ見る少し睨んだような翡翠の瞳。
 
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