X*A SS

□散る羽根の音
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頼むから、この闇を消してくれるな。



【散る羽根の音】



おかしい
馬鹿げている
ふざけるな

こんな事あるはずがない。
貴様らは何を言っている。

アイツが、アイツがこんなにも呆気なくくたばるものか。

この俺がどれだけ引きずり下ろそうとしても叶わなかった事実を、簡単に覆すな。
それだけストライクが強かったのだと、そう貴様らは言いたいのか。

同胞が消えて逝くなど、前線に立つ身として決して珍しくはない。
ラスティ、ミゲル、ニコル、身近でさえ次々と命を落としている。
だがアイツは、アイツだけは、そうはならないはずじゃないのか。
自分よりも優っているなど認めたくはないが、背を預けるには十分なあの力。
何を考えているのか分からない堅物だが、それは紛れもない事実で
きっと心の奥底では、アイツは違うと確信していたのだと今気付く。

けれど、飛び交う声が、鳴り響く警報が、無数のモニターが、
それは幻想だと嘲笑うかのように俺を取り囲み、侵蝕する。

あの憎たらしい面を、もうこの目に映す事はないのかと思うと
今まで清々すると考えていた場所が、ぽっかりと穴を開けているような感覚。
気付けばそこに、別の感情が入り込んで我物顔に鎮座している。

会えないのか。
もう二度と、会えないのか。

何故、戻ってこない。

狭い管制室の中、1人取り残されたような世界で問い掛ける声だけが木霊する。
それに応える声はなく、癪に触る生意気な声も飛んではこない。
それが、目の前の現実との距離をより一層近いものにし、遠くする。


あぁ、ならばいっそ。


この胸に巣喰った見えない感情ごと。



fin.
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