レイアSS-M

□雨打つ荒野
1ページ/5ページ

ごつごつとした石造りの壁に、ぽたりぽたりとどこかで水の滴る音がする。肌に滲むじめじめとした湿気に、様々な腐敗臭が入り乱れこの部屋の不衛生さを物語る。薄暗い部屋は外界と完全に隔てられ、僅かな日の光もない。
鉄の格子で仕切られた広い牢獄の一番奥、冷たい壁に鎖で繋がれた一人の青年がいた。
僅かに胸が上下するため、かろうじて生きているのは分かるが、その顔は生気が感じられないほどに白く、堅く閉ざされた瞼の上の額から赤黒い血の跡が幾筋も流れていた。



「っ・・・・・・」

青年はずきりと額を走る痛みに意識を取り戻した。無意識にゆらと揺れた身体にじゃらりと重苦しい金属音が耳に入る。

「ここ・・・・・・は・・・・・・」

ここはどこだ?なぜ私はこんな場所に・・・・・・・。

とその時、ガチャリと錠の外れる音がして誰かが部屋へと入ってくる気配に青年は僅かに顔を上げた。カツカツという聞き覚えのある硬質な靴音。やがて視界にまばゆい光源が現れて目をしかめる。目覚めたときの暗がりに慣れた瞳に、それがただのランプだと気が付くのに少しの間が必要だった。ようやくランプの光を目視できる程度に目が慣れた頃、足音は計ったように青年の囚われている仕切りの前で止まった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ